ウルトラファインバブルは種子の発芽だけでなく、ウイスキーとビールの麦芽製造へも効果がある

種子の発芽

種子の発芽とは、種子が休眠期間を経て植物の代謝機構が活性化され芽を出すまでのプロセスです。種子の発芽率が高いことは野菜生産にとって重要です。種子の発芽率を高めるには、温度、種子の年齢、水、酸素がすべて正しくなければなりません。発芽のプロセスは、農家が新しい植物を栽培するために重要であるだけでなく、発芽プロセスが使用される食品および飲料業界でも、いわゆる麦芽製造よりも重要です。ウイスキーやビールはすべて麦芽を使用して製造されます。ここで重要なのは発芽ではなく、種子に含まれるデンプンから糖への変化です。

ウルトラファインバブル

ウルトラファインバブルは生体の新陳代謝を促進するのに役立ちますが、そのメカニズムはまだよくわかっていません。ある研究では、ウルトラファインバブルによる活性酸素（ROS）の生成と種子の発芽への影響を調査しました。マイクロバブルとは、直径が数μmから100μm程度の気泡のことです。ウルトラファインバブルとは、直径がサブマイクロメートルの気泡です。
ウルトラファインバブルは生体に影響を与え、酸化に影響を与えます。超微細な気泡を含んだ水は、植物、貝類、酵母の成長を促進します。さらにウルトラファインバブルを使用することで酸化効果を高めています。オゾンのウルトラファインバブルを利用して野菜に残留する農薬を除去することが出来ます。これらは微生物を不活性化し、廃水中の有機物質を減らすことができます。ウルトラファインバブルの酸化能力とは別に、ウルトラファインバブルの生成中に、強酸または紫外線の存在下で外因性の活性酸素（ROS）が生成されることが明らかになりました。

活性酸素(ROS)

活性酸素(ROS)は酸素を含む化学反応性分子で、例としては過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、単一酸素などがあります。 自然界では、ROS の形成は酸素代謝の副産物です。熱や紫外線などの環境ストレスがかかると、ROS レベルが大幅に上昇し、細胞の損傷につながる可能性があります。これを酸化ストレスと呼びます。生物自体による ROS の自然生成とは別に、ROS は植物の外部の供給源によって生成されることもあります。外因性 ROS の生成は、タバコ、煙、薬物、生体異物、放射線によって発生する可能性があります。ROS は植物、人間、動物にプラスとマイナスの両方の影響を与えることを理解することが重要です。

過酸化水素とウルトラファインバブルによる発芽比較

活性酸素の一種であるH2O2 (過酸化水素) を添加することにより、大麦、小麦、米などの穀物の発芽は改善します。適切な量を添加すると種子には害がなく、植物の成長プロセスを開始するための重要な信号機能である細胞壁を緩めるのに役立ちます。

研究では、蒸留水、3種類の異なる濃度の過酸化水素、ウルトラファインバブルを使用した5つの異なる条件下で種子を発芽させました。溶存酸素 (DO) の影響を避けるために、水の濃度レベルを蒸留水のレベルと同じになるように調整しました。研究の結論は、H2O2の添加により大麦種子の ROS 生成が刺激され、発芽 17 時間後にはウルトラファインバブル水の中の種子の発芽率が、異なる H2O2 溶液に浸した種子よりも高いということでした。

考察

活性酸素は、がんやその他の病気の発症に有害な化合物として見られることがよくあります。一方、活性酸素が存在しない場合、種子は発芽しません。そこで、適切な量の活性酸素が存在する場合にのみ発芽が成功することを示す「発芽の酸化ウィンドウ（oxidative window of germination）」の概念が導入されます。ウルトラファインバブルのメカニズムと生理学的促進効果を完全に理解するには、さらなる研究が必要です。ウルトラファインバブルがH2O2よりも成功する理由は、保存中にバブル濃度が徐々に低下するためである可能性があります。また、ウルトラファインバブルが消失することで水中に活性酸素が継続的に生成されるためである可能性があります。

引用元

上記の投稿は ACS Sustainable Chemistry Engineering の資料から編集されました。コンテンツはスタイルと長さのために編集されています。

写真クレジット: 米国農務省